LARRY HEARD
引退宣言をしてから以前にも増して新作をリリースしまくっているよくわからない人。副業でコンピューターのプログラマーをやっているらしく、ダンスミュ−ジックのマーケットではたいして稼げないのだろうかとこちらが心配になってくる。(音楽活動の方がアルバイト感覚でやっているのかもしれない)
シカゴ時代は、Mr.フィンガーズ名義で"Can You Feel It"、"ON A CORNER CALLED JAZZ" 、等の数多くのハウス史に残る傑作を生産していた生粋のクリエイタ−。現在はメンフィスを拠点に活動しており、Brett Dancer、Ron Trent、らアフロチックな志向を持つア−チストとのコラボレ−ションを試みている。
近年はドラムンベース寄りの作品が多く、地味ながらもUKのレーベルから数枚シングルを出している。相変わらずクオリティは高く、その類まれなメロディメーカーとしての資質は健在。センシティブでジャジーなその音の感触は、熟成したワインを思わせるものだ。
選曲はガラージからアンビエントミューッジックまで幅広く、ラウンジ向けの大人の音楽に浸れる。かって、ミニストリーサウンドのイベントでゲストDJとして呼ばれた時、セカンドフロアで場にそぐわないトリップホップやドラムンべ−スをかけまくり、多くのクラバーから顰蹙をかったという過去を持つが、なんとも彼らしいエピソードではある。その時も、ブーイングを浴びながらも、かたくなに自分のプレイを続けたとか…。やっぱり、他のブラックミュージシャンと同じく相当な頑固者なのだろう。2000年に3回目の来日を果たしたが、その時はオーソドックスなハウススタイルに戻っていた。やっぱりよくわからない?
兎にも角にも稀有な才能の持ち主なので、無責任な引退宣言などせず、ファンとしては末永く活動してもらいたいものだ。